処方箋調剤が中心の薬局で、一般用医薬品や健康食品などの販売を積極的に拡充する経営手法が増えてきました。調剤専門だと処方箋を持たない顧客にとっては敷居が高くなりがちですが、都内港区で開局するフレンド薬局芝大門店では、限られたスペースで小さな工夫を積み重ね、処方箋患者に限らず、幅広い顧客のニーズに合わせた販売コーナーを展開しています。同薬局の管理薬剤師・寺田友美さん(当時、現在は表参道店の管理薬剤師)とメディカルパートナーの佐藤裕美さん(以下、敬称略)に、店づくりのポイントなどについて伺いました。
―専用什器を導入してのコーナーリニューアルとお聞きしました。
寺田 現在の形にしたのは2021年の夏のことです。それまでは汎用品の什器を流用しての商品販売コーナーだったので、商品レイアウトを工夫するにも難点があったのですが、専用什器を導入することで商品が見やすくなり、来店される方の注目率も格段にアップしたように感じています。
当薬局は隣接する内科医院を中心に、1カ月平均500枚から600枚ほどの処方箋を応需する調剤主体の薬局ですが、2011年8月のオープン以来、ささやかながら、こうした商品販売コーナーは設けていました。必要最小限のアイテムからスタートし、顧客ニーズに合わせ、できる範囲で商品ラインアップを拡充してきました。
リニューアル前の商品販売コーナー。収納スペースが限られていることや商品の一部が患者様の手が届きにくい配置になってしまうなど様々な問題がありました。
リニューアル後の商品販売コーナー。透明の什器に変更したことで、見栄えもよく商品一つ一つを手に取っていただきりやすくなりました。
―どんな顧客ニーズがあったのでしょうか。
寺田 浄土宗七大本山の一つ、増上寺の芝大門から続く参道沿いに立地する当薬局周辺は、近くに東京タワーなどもあり、コロナ禍以前は多くの訪日客が訪れる観光スポットでもありました。商品購入客の8割ほどがインバウンドのお客様でした。英語での対応ができることを店外に掲示し、近隣のホテルなどにも、そのような薬局が近くにあることをご案内することで、外国人観光客が増えていきました。需要としては風邪薬や湿布薬、乗り物酔い止めなどが多く、時に日本の食事が合わなかったのか、胃腸薬を買い求める訪日客の方もいらっしゃいました。そうしたさまざまなニーズが、必然的にラインアップの拡充につながっていきました。
ただ残念ながら、コロナ禍後はインバウンド需要が消失し、商品構成や売れ筋も変化しています。マスクのラインアップ強化などは、典型的な一例だろうと思います。
―新型コロナの影響で、待合室から雑誌や新聞等を撤去するケースが目立ちます。おのずと視線は、商品販売コーナーに向きますね。
寺田 汎用什器から専用什器にリニューアルした相乗効果とも相まって、確かにその傾向はあります。
佐藤 お客様の「気付き」を意識して、時季に応じて、商品レイアウトは頻繁に変えるようにしています。そうしたことが奏功してか、以前に比べ、陳列棚を興味深く見ていただけるお客様が増えている印象はあります。
薬局の店内全体。カウンターにもスペースを広げることで、食品と医薬品に分け、受付時にも手に取って頂きやすくなるよう工夫をしています。
―そうした中で、現在の売れ筋商品はなんでしょう。
佐藤 「歯ブラシ」です。「シーアイ プロプラス」という100円の商品をまとめ買いされるお客様が少なくありません。毛先が細くなっているので歯間ブラシのような感覚で利用されています。一度使い始めると「これでないとだめ」とおっしゃるお客様もおられるほどです。「濃ーいみかん」や「濃ーいリンゴ」などの「濃い飴」シリーズも人気です。
使い心地だけでなく、お手頃なお値段とカラフルな色のバリエーションも人気な理由です。
乾燥する冬の時期には特に売れ行きの良い商品です。
―今後の店づくりについての豊富をお聞かせ下さい。
寺田 長引くコロナ禍の影響で患者様の受診抑制が進み、それに伴う処方箋枚数の減少にどのように対応するかが大きな課題ですが、商品販売の充実強化もそのための方策の一つと位置付けています。最近では、処方箋患者様がプラスアルファで商品を購入されるケースも増えてきました。処方箋を持たないお客様のニーズにも応えていきたい。限られたスペースで、今後とも創意工夫を積み重ねていきたいと考えています。
―分かりました。本日はどうもありがとうございました。
フレンド薬局を展開する株式会社フレンドは栃木県小山市に本社を構え、地元・栃木のほか、東京、埼玉で22薬局をチェーン展開しています。1990年8月の創業から30余年。「夢・希望・優しさ・チャレンジ・自立という思いで、21世紀の健康と福祉をサポートする」を企業理念に、在宅介護にも国内45事業所で取り組む一方、タイでの医療福祉事業にまで裾野を拡げています。
Activeプラス編集部